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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(あ)3590号 決定

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人平井篤郎、同和田良一の各上告趣意は、違憲をいうけれども、その実質は単なる法令違反及び量刑不当の主張に帰し、いずれも刑訴四〇五条の上告理由にあたらない(なお本件に適用される昭和二七年法律一九八号による改正後の明治三二年法律六一号関税法八三条による没収及び追徴は、国家が同法規に違背して輸入したる貨物またはこれに代るべき価額が犯則者の手に存在することを禁止し、もって密輸入の取締を厳に励行せんとする趣旨に出たものであって、所論のごとく被告人をして不正の利益を獲得せしめざるがため、これを剥奪することを本旨とするものではないと解すべきこと及び同条の規定は、刑法一九条及び一九条の二の規定に対する特則であって、いわゆる必要的没収または追徴を定めたものと解すべきことは、昭和一〇年四月八日大審院判決、刑集一四巻六号三九一頁、当庁同二八年(あ)第四七二一号同三二年一月三一日第一小法廷判決の趣旨とするところである。また想像的競合の関係にある数罪が刑法五四条一項前段の規定により、その最も重い刑をもって処断される場合においては、その最も重い罪について没収または追徴を附加すべき旨の規定がないときでも、その他の罪につきその旨の規定が存する限り、これを附加することができ、必ずしもその最も重い罪との関係において没収または追徴をすることを要しないものと解すべきである。大正二年一〇月八日大審院判決、刑録一九輯九四九頁参照。この点に関する原判示はまことに正当であり、そして原判決は、被告人に対し、法律所定の主刑と追徴とを、法律において許された範囲内において量定宣告したものであることが明らかであるから、原判決には所論のごとき違憲はなく、各所論はひっきょう立法の非難に過ぎないか、或は原審の法令の解釈の誤りまたは量刑の不当を主張するものに外ならないからである)。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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